皆さんは、真っ白な毛をもつ競走馬を知っていますか?
白い毛を持つ競走馬というと、ゴールドシップやオグリキャップなどの芦毛馬を思い浮かべる方も多いかと思います。
しかし、それは芦毛という毛色で真っ白の白馬では無いです。
白毛馬は生まれながらにして毛色が白いという特徴がありますので、厳密に言うと芦毛馬と白毛馬は違う毛色の馬という事になります。
白毛馬は8種類の毛色の中でも誕生する頭数が極端に少なく、競走馬としてデビューしている白毛馬も多くはありません。
今回は、真っ白の毛を持つ白馬を紹介しながら、説明します。
白毛の競走馬は0.04%
突然変異で白毛が生まれる確率は非常に低く、1万頭から2万頭に1頭ほどの確率でしか産まれないと言われています。
中央競馬で分類されている8種類の競走馬の毛色でも、白毛の競走馬の割合は0.04%とかなりレアです。
芦毛も加齢によって毛が白くなっていきますが、芦毛の場合は肌が黒っぽく、白毛の場合は肌がピンクという違いがあります。
すべて毛色の種類8種
サラブレッドの毛色は8種類に分類されます。
■鹿毛(かげ)
■黒鹿毛(くろかげ)
■青鹿毛(あおかげ)
■青毛(あおげ)
■栗毛(くりげ)
■栃栗毛(とちくりげ)
■芦毛(あしげ)
■白毛(しろげ)
競走馬の毛色は合計8種類も存在しています。
それでは系統別に特徴を見ていきます。
希少種の代表馬
■青毛(出現確率1%以下)
日米のオークスを制したシーザリオ、ヴィルシーナ・ヴィブロス姉妹などがいます。
■栃栗毛(出現確率1%以下)
近年だとノンコノユメ(フェブラリーS)が有名です。
少しさかのぼるとサクラローレル(年度代表馬)、マーベラスサンデー(宝塚記念)、サッカーボーイ(マイルCS)などのG1馬がいます。
■白毛(出現確率約0.04%)
ユキチャンが地方交流重賞を3勝しています。重賞を勝ったのも中央のG1に出走したのもユキチャンのみです。
白馬の代表はユキチャン
白馬の中でも、有名なのがユキチャンという競走馬です。
父・クロフネ、母・シラユキヒメという血統です。
ホワイトベッセルの全妹であり、シラユキヒメの3番目の産駒になります。
兄・ホワイトベッセルと同様に2戦目(中山競馬場・ダート1200m)で初勝利を挙げたユキチャンは、地方交流重賞初出走となった関東オークスで重賞初勝利を挙げます。
白毛馬による重賞勝利はJRA・地方競馬を通じて史上初の快挙となりました。
2010年12月に現役を引退するまで重賞を3勝したユキチャンは、2010年度のNARグランプリ最優秀牝馬のタイトルを獲得しています。
毛色別のG1馬の頭数
2005年以降に生まれたG1馬を2020年1月までカウントしています。
毛色 | 推定値 | G1頭数 | 実割合 |
鹿毛 | 50% | 80 頭 | 45.5 % |
黒鹿毛 | 14% | 36 頭 | 20.5 % |
青鹿毛 | 3% | 11 頭 | 6.3 % |
青毛 | 1%以下 | 5 頭 | 2.8 % |
栗毛 | 25% | 28 頭 | 15.9 % |
栃栗毛 | 1%以下 | 1 頭 | 0.6 % |
芦毛 | 7% | 15 頭 | 8.5 % |
白毛 | 0.04% | 0 頭 | 0.0 % |
活躍した種牡馬によって毛色も偏りが生じてしまいます。
栗毛の頭数が少ないのはディープインパクトの影響ですね。
それを除けばおおまかに推定値通りといえるのではないでしょうか。
JRAに登録されている競走馬は3頭(2020年現在)
芦毛よりさらに珍しい白毛は、JRAに登録されている競走馬が8000頭近くいる中で「マーブルケーキ」、「シロニイ」、「ホワイトドラゴン」のわずか3頭(2020年1月22日現在)しかいません。
では、白毛はどうやって誕生するのでしょうか!?
親からの遺伝で産まれる白毛馬
先に挙げたマーブルケーキ、シロニイ、そして先日引退したばかりのブチコの3頭の白毛の馬はいずれも母が白毛の「シラユキヒメ」で、親からの遺伝です。
ですが、シラユキヒメのお父さんは青鹿毛の「サンデーサイレンス」、お母さんの「ウェイブウインド」は鹿毛なので、シラユキヒメは突然変異で白毛になったのです。
毛色以外にも、競走馬として一番大切な競走能力を含め性格など色々なものを両親から受け継ぎますが、人間と同じように受け継がれ方は千差万別です。
競走馬というと、父系に重きを置く傾向がありますが、2015年にはアメリカで競走能力は父よりも母の影響が大きいという研究結果も発表されています。
ホワイトクリスマス賞
ここで、白い馬が好きな方に面白いレースが存在しますので、紹介します。
それは、地方競馬の川崎競馬場で行われる、「ホワイトクリスマス賞」です。
「ホワイトクリスマス賞」とは年末に川崎競馬場で行われる、芦毛・白毛の馬だけで行われる名物競走のことです。
今どきっぽい感じもしますが、1978年創設と40年の歴史ある特別競走なのです。
興味のある方は、ぜひ見て見ましょう。
川崎名物コスプレ誘導馬
この「ホワイトクリスマス賞」の名物となっているのがサンタやトナカイのコスプレをした誘導馬たちの姿です。
誘導馬たちもみんな真っ白です。
真っ白な馬体に赤いサンタ・トナカイコスプレが人気で、写真を撮りに来る子供などを多く存在します。
白毛馬でJRAの重賞を制覇した馬は?
過去のレースで勝ち上がったのはハヤヤッコ、マイヨブラン、ブッチーニの3頭です。
8月4日に新潟競馬場で行われたレパードS(GⅢ・ダート1800m)で勝利したハヤヤッコは、白毛馬として初のJRA重賞制覇を果たしたとして話題になりました。
マイヨブランは昨年末の新馬戦で、ブッチーニは今年3月の未勝利戦で、それぞれデビュー勝ちを果たしています。
実はこの3頭、いずれも白毛馬であるシラユキヒメの血統(母系)です。
ブッチーニは直仔、ハヤヤッコとマイヨブランにとっては祖母にあたります。
いかに母系の血が濃く出る血統かということがわかりますね。
しかし、白毛馬の勝ち上がり率が高かったのは、現3歳世代が偶然の高かっただけなのでしょうか。
2014年産まれの現5歳世代と、2015年産現4歳世代のデータについても調べてみました。
2014年産はカスタディーヴァ、シロニイ、ホワイトドラゴンの3頭が出走しています。
3頭全てが勝利したため、勝ち上がり率は100%でした。
この年は3頭中2頭が外国産馬でカスタディーヴァはニュージーランド産、ホワイトドラゴンはアメリカ産でシラユキヒメの血統はシロニイのみでした。
2015年にJRAで出走したのはハウナニ(祖母がシラユキヒメ)のみでしたが、2戦目の未勝利戦ではきっちり勝ち上がったため、この年も勝ち上がり率100%を達成いています。
データを見ても分かるように、産駒数は少ないものの近3年で勝ち上がれなかったのは、1頭のみというのは驚異的な数字を出していました。
「白毛」が発現する理由については、今のところ十分に解明されておらず、謎は深まるばかりですね。
今後の研究によって、その理由が明かされるのかもしれないですね。
まとめ
今回は、競走馬の白毛について紹介しました。
しかし、この白毛が産まれる可能性は0.04%と非常に少ない事には驚きます。
また、この毛色に関しては遺伝という事に驚きですね。
ディープインパクトは鹿毛のホモ遺伝子をもっているため、栗毛の産駒はいません。
レアは白毛も、片親で白毛であれば50%の確率で白毛の仔が誕生します。
白毛はほかのすべての毛色に対して優性であるためです。
ぜひこの記事を参考に、今後も毛色を気にしながら競馬を応援すると面白いと思います。